また引き受けてしまった。しかし、今度こそ”桐”や”DBPro”と関わるのは本当に最後である。
1997年秋。”Windows”の窓の中で”MS-DOS版の桐Ver.5″を使い続けて来たユーザーにとって、待望の”桐Ver.6″がついに発売された。5万人とも10万人ともいわれた”桐”愛用者にとって夢にまでみた瞬間であったはず。
しかし。桐の愛用者はみな狂喜乱舞して、発売日にはショップに長蛇の行列が・・・という状態とはならなかった。
花盛りであったパソコン通信や、インターネット黎明期でもあり、さまざまなレベルの豊富な情報によって、”Ver.6″が中途半端な完成度の製品である事は発売前から多くのユーザーには既成事実となっていたのである。
コアなユーザーの多くは既に”DBPro”に流れかけていたという重い事実もそれに輪をかけた。
それでも、結局”DBPro”は”桐”ではなかった。ユーザーは、複雑な思いでその登場を待ちわびていたのである。
そして、ようやく現れた”桐Ver.6″は、やはりユーザーが待ち望んでいたような”Windows版桐”ではなかった・・・
何よりも、ユーザーが長年苦心して蓄積して来た、肝心の“一括処理”が使えないのだった。
互換性レベルなどという話ではなく機能そのものがないという衝撃の事実。あり得んやろ、それって・・・(;゚Д゚)
もちろん、”k3″がそれを致命的な問題として認識していないはずはなかったが、実装するにはあまりにも準備期間が短か過ぎたというのが実情だろう。
前回書いたように、当時も市販ソフトウエアにとって、解説本の存在は非常に重要であった。優れた解説本の存在は他の何にも増して、最も効果のある販促ツールなのだった。
あまりに長すぎた待機期間後の見切り発車に近い状態で、ようやく”Windows版の桐”を発売にこぎつけようとしていた”k3″とて例外ではなく、その数カ月前から”DBPro”本の著者チームに解説本の執筆を働きかけていたのである。
※いや、それが事実かどうかは分からない。憶測で書いているので割り引いて読んでいただきたい。
この本の出版社は「技術評論社」であり、もちろん出版のハナシはそこから来ていた。しかし、”k3″の多大な協力が背景にあった事は間違いない、と云えるだろうと思われる。<— 三流ライターの常套句や。
その証拠は、223頁から始まる「第13章 管理工学研究所に聞く/浦秀樹」にある。あたかもニフティの会議室のように忌憚のない浦氏のストレートな質問に、同社の名物社員であった武田氏が丁寧に答えるというコーナーである。
もちろん彼は会社を代表して正式に回答しているのだ。”k3″が、一般ユーザー向け書籍の中でこのような露出の仕方をするのは異例中の異例であった。
サービス精神 ?「ノー !」 。方針転換 ?「ノー !!」これを「危機感の現れ」と言わずして何というのだ。
プライドをかなぐり捨てて必死である。ここでユーザーの根本的な疑問に応えておかないと未来はない、と。
何しろ、浦氏をはじめとする著者チーム(1名を覗いて)は、既に競合製品の”DBPro”を称賛する解説書を三冊も執筆していたのである。完成度の低い”Ver.6″をこの連中に渡しても、”提灯記事”など書くはずがなく、弱点もそのまま遠慮なく世間にさらされてしまう事態となるのを承知で賭けに出たのであろう。
結果は半分は成功だったといえるかもしれない。”k3″のこの姿勢に対して、かなり著者チームは好意的に受け止めたようにみえるからである。
「はじめに」のページで、”DBPro”にはまったく触れず、もっぱら”Access”をライバルとして”桐”の優位性を強調していた事がそれを端的に表している。
しかし、それには同意しない厄介者もチーム内に約一名いた。もちろん彼はオトナだったので、チームワークを乱すような振る舞いはせず、淡々と与えられた役割をこなしていた。特に何の思い入れもなくクールな心境で。
良くもそんな失礼な心構えで”桐”のチームに加わったもんだと今から思い返しても反省しきりであるが、先輩メンバーもそれは了解の上だった。本書は、”Access”を比較対象とするのがメインテーマのひとつだったのだが、メンバーの中で”Access”を語れるのは「或間二郎」だけだったために黙認されていたのである。
今回は、共著メンバーとして参加した中で最も原稿量が少なかった。とっくに限界だった。もう”桐”について何も書けなかったのである。ボスからの「”Access”の章は任せるから頼むよ。」との誘惑に負けたのが実情だった。
この時期は、職場のPCからも完全に”桐”は削除され、すべてのPCに”Access95″がインストールされていたのだ。
そんな状況の中で”桐”にも”DBPro”にも、もう二度と関わりたくなかったはずなのに渋々引き受けたのは、”管理工学研究所”と”桐”への感謝と惜別の思いもあった事も間違いない。「今までありがとう、そしてさようなら。」の心で。
そうそう。この仕事は画期的な出来事ではあった。
ようやく「或間二郎」という名のライターが世に出た記念すべき瞬間なのだった。
実際には、最初の単行本から「ペンネームで」との意向を伝えてあったにもかかわらず、タコな編集者がそれを忘れて実名を印刷されてしまっていたというのが実情なのであった。
ちなみに。
ニフティ会議室で初めてその名を出してくれたのは、つい最近まで”R師”だとばかり思い込んでいた。
しかし。何とそれは”飛雄馬”さんだったという衝撃の事実も明らかになったのだ。(;`ー´)
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182/185 QFF03001 飛雄馬 RE:祝!あるまじろさん処女出版
( 6) 94/07/29 08:56 151へのコメント
或間二郎さん(笑)、処女出版おめでとうございます。名古屋でも出てましたよ。
(・・・以下省略)
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その基となったのは「一歩先を行く DBPro V.2 100%活用法」の第5章に出てくるサンプルデータ。
自分の記憶でも最初はこうだったのだが、おそらくは”飛雄馬”さんのタイプミスまたは誤変換で「或間二郎」が誕生したという数奇な運命なのだった。当の本人も「二郎」の方が断然イイと感じ、そのまま名乗る事となった。
どうせ、サンプルデータの方は担当ライター氏が思いつきでテキトーにつけただけなのは明白であるし。
そのため、どちらが本当の名付け親なのかの判断は極めて難しく、未だに謎である。それでOK牧場や。(^。^;
それにしても、”或間”氏がダントツのA評価というのも、”柿ノ沼”氏はさすがの見識である・・・
コメント
コメント一覧 (6件)
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ワタシがそのお名前を使わせていただいたのは書籍中に使ったサンプルデータの中だっと想います。
何の本だったかはわすれましたが・・・^^;
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その通り、大した記憶力じゃないですか。( ´ー`)
取り急ぎ、てんまつを本文に追記しておきましたので。
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いやぁ~面白い!
このシリーズずっと見させていただいていますが、
まさに歴史のお勉強の時間になってます(^^)
引き続き楽しみにしてまーす!
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かとうさん、いつも励ましのコメントありがとうございます。
年を食ってくると「回顧録」を書くのが何よりの楽しみになってくるという好例のようです。
"或間二郎"シリーズは今年いっぱいくらいは続くかもしれません・・・
そうそう。他の皆さんもですが、気に入った記事には"拍手"をいただけたら幸甚です。(^。^;
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とても面白かったです。このシリーズ
何度もこそっと来ては(くりまんさんちから)読み返しました。なつかしさをありがとうございました。盗み読みを続けていたお詫びも込めてご挨拶を(^^;
追伸:私も年寄りです(余分)
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千絵さん、こんにちは。いや、はじめましてですね。
コメントありがとうございます。
桐たんすの事を書いたブログって、案外ないんですよね。
なら、自分で書いてやろうかというわけで始めて見たら止まらなくなってしまったというのが実情です。( ´ー`)
"(くりまんさんちから)"というのが、最初意味が分からなかったんですが、おそらく師匠のブログのリンクの事なんですね。
ちょっと邪推してしまった自分が恥ずかしい・・・(;`ー´)