にわかコンサルタントもどきの体験記

F社の状況確認と(口頭とはいえ)簡単に契約を済ませて、翌週土曜日も続けて訪問した。
システム開発の目的は「製品データベース」である。建設資材メーカーである同社の製品は多品種少量生産なので、カタログ掲載分だけでも製品数は常時数千種、細かな部品等加えると軽く万を超えていたはず。
とにかく紙ベースなので、誰もその全貌を把握出来ていないのだった。
そりゃぁ、色々と困るよねたしかに。( ´ー`)
ところで、そもそも論からいえば F社くらいのビジネス規模なら、フツーにシステム開発専門会社に依頼するのが正道だし、今回の案件なら 1千万円くらいの予算で実現出来るのではないかという話もしたのだが、出入りの事務機器業者から提示された提案内容が N専務の気に入らず、どうしても自社開発したいのだとの希望であった。
まぁ、こんなのは価値観の問題なので、それ以上突っ込んで事情を聞いても仕方ないし、追求はしない。何しろ、今回の案件”だけ”ならば、たしかに”Access”で対応可能と判断したから。
前回の打ち合わせの終盤で、何とサーバー機が存在しない事が判明し、クライアント台数に関わらず必須であると説明して帰ったのだが、二度目に訪問したら既にNEC製の立派なサーバー機が設置されていた。
業者の勧めで512MByteものメモリも実装しているとの事であった。軽く100万円オーバーの投資である。
当時はまだまだメモリが高価な時代である。64Mもあれば非常なぜいたくだった。しかもサーバー用と銘打っただけでパーツの価格は相場の数倍以上の値が平気で付けられている。それだけで数十万円の上積みになってるはず。
まぁ、それ自体は F社の経営規模からすれば、別に大した金額ではないはずなのだが。期待の大きさを感じた。
まいったなぁ~・・・責任重大や。
自分の何気ない一言で、すぐにそんな決断をされるという事実に直面し、ちょっと怖くなった。
いや、ホンマ。今更「”Access”ベースなので、サーバーに大量のメモリは不要」なんて説明も出来ないし。
ま、システムは必ず将来拡張されるであろう事を考えてみれば必ずしもムダとも言えんが。(;`ー´)
さて、とりあえずは F社のシステム開発メンバーが半年がかりで作りかけているというデータベースの内容を見せてもらうのを最初の仕事とした。彼らの能力レベルが分からないと何も始まらないし、実物を見れば具体的にどのようなシステムを目指しているのかも判断しやすいからである。
ひょっとして、自分が想定していたよりも高レベルであったとしたら、「センセイ」と呼ばれて高額な報酬をいただくわけにはいかない。とにかく最初が肝心や。
ひと通り説明を聞いて、アプリケーションを操作してみて、一安心した。( ´ー`)
たしかに、このままでは何時まで経っても完成に至らない事はすぐに判明したからである。
何をするにも、なぜかやたらと時間がかかるフォーム表示やクエリに、煩雑で操作手順の分かりにくいフォームデザイン。内容の割に、データベースウィンドウにはおびただしい数のテーブル数。
そして、ちょっと数行みただけでも頭がクラクラして来そうな VBAのコーディング。(。-ω-)
責任者の K氏に事情を聞くと、知識ゼロからスタートして、山のように参考書籍を読み漁り、講習会にも通い、勉強を重ねたがどうしてもシステム開発の道筋が良く見えないのだそうだ。
そういわれて、書庫に目を向けると大変な量の”Access”やデータベース関連書籍が並んでいた。
大半が”ゴミ本”またはやたら難解な解説書だった。この種の本は一冊当たり2,000~5,000円はする。それだけでざっと十数万円の投資にもかかわらずほとんど役立たずなのだった。
それはお気の毒。いかにも真面目で実直な印象の K氏。さぞや会社からのプレッシャーにさらされ続けただろうなと同情してしまった。
そんな中で出て来たのが、「或間二郎センセイの書籍の内容が最も分かりやすく参考になりました。」とのありがたいお言葉であった。それを聞いて、N専務がコンタクトをとってきたというわけ。
そんなやり取りをしつつ、多数のテーブルデザインをチェックしつつ、おもむろにリレーションシップウィンドウを表示してみて目が点になった。( ゚Д゚)
まるで「クモの巣」のように連結線が張り巡らされていて、その数たるや数える気もしないほど。
「いやぁ、初心者が良くハマる罠ですな。ワッハッハ。」と笑うわけにもいかず、一応理由を聞いてみたら、たいがいの入門書には「リレーションシップはきちんと設定しましょう」と書かれているからだとの事であった。
はぁ、やはりそうでしたかって。初っ端から疲れるなぁという重い雰囲気・・・
「いや、こんな事してたら動作が遅いのは当たり前です。本当に必要不可欠な部分以外は全部取っ払いましょう。」と説明しつつ、リレーションシップの削除作業を指示。
ざっと見たところ、”本当に必要不可欠”なものなどなかったのだが、いきなり全否定するのも気が引けたので、10本足らずに減らしたところで終了。半信半疑のメンバーに質疑応答しながらなのでこれだけで 1時間は費やしたな。
あらためて検索フォームを表示させてみたら、見違えるようにレスポンスよく動作するようになったのには一同目が点になっていた。とりあえずは面目躍如であった。
製品マスタとしては、まだ500アイテム程度しか登録されていなかったので、本音では「遅くするほうが難しい」のだがね・・・(;`ー´)
その後は、クエリデザインのチェックと数十にも及ぶテーブルの内容チェックでその日は終わり。
いやぁ、疲れたといえば疲れたけど、楽しかった。何しろアドバイスするたびに喜んでもらえるのだから、いやでもモチベーションは上がります。
口々に「センセイ」を連発されるのには本当に閉口したが。
この状況では仕方ないけどね。フツーの人にとっては単行本の著者というだけで見る目が変わるし・・・( ´ー`)
DSC02965.jpg
※写真は本文とはまったく関係ありませんが、文章ばかりだと書いてる方も疲れます。(;`ー´)
引き続き、二回目はテーブルとクエリの洗い直し作業。
三回目は、サンプルの検索フォームを持参してまたまた驚嘆され、その解説。
四回目は、メンバーによってリニューアルされたアプリケーションのチェック。さすが、元々頭脳の優秀な人たちなのでアドバイスに対する理解力も応用力も素晴らしく、まさしく長足の進歩だった。
五回目は、あまりアドバイスの必要性もなくなって来ていたので、あらためて”Access”によるシステム開発の総論や拡張の方法を説明してキレイに終わるつもりだった。
いやはや、最初に「五回」と宣言していたのが本当に良かった。自分の直感力に自分で感心する事になった。
この時点で、もうメンバーを刮目させるような余力はこっちにはほとんどなくなっていたのが実情だったのだ。
正確には、予定通りにカリキュラムを終了して報酬も受け取ったのだが、最終回の後半になって参加して来た N氏から新たな案件が出て来たのである。製品データベースのメドはついて来たので、これをベースとして生産管理や在庫管理システムとして発展させたいとの希望だった。
「そうら、やっぱりそう来たか・・・」最初は「とにかく製品データベースさえ出来ればそれで良いのです。」と明言されていたのだが、所期の目標を達成したらしたで、この規模の会社がそれで済むワケないよな。( ´ー`)
当然、アプリケーション以前に、工場や支店・営業所とオンラインで接続というインフラが必須。
これまで労力を注ぎ込んだアプリケーション開発スキルがムダになる事はないが、あくまで”端末”としてである。
構想実現には、完全に”Access”の守備範囲から逸脱している事をあらためて説明して何とか理解してもらった。
何となく、後味が悪いような書き方をしているのは、引き続きコンサルタントを切望されたのを断固としてお断りしたためである。N専務は人柄も良く素晴らしく前向きで勉強熱心な方で、本来なら自分でアプリ開発も取り組みたかったのだが要職にあるため、それは断念したとの事だった。システム室メンバーも良い人たちだった。
出来ればもっと長いお付き合いもしたかった。しかし、「残念ながら御社に対して自分がお役に立てるのはここまでです。」という説明を謙遜のように受け取られて中々諦めてもらえなかったのがちょっと辛かった・・・
せっかく大塚商会と取引があるのだから、そちらの方でそれなりのシステム会社を紹介してもらうのが最善ですと言い残して、にわかコンサルタントの任務終了となりました。
ちなみに、F社は20年後の今日も堅実経営をされています。もちろん”IT”もばっちりモノにされている様子。
以上。( ´ー`)

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