一年くらい前に何気なく書店で目に入り、買ってみた単行本小説。けっこう面白くて一気読みした記憶がある。
今や60~65歳で会社人生から強制的に退場させられる人たちは物凄い数になっていて増え続けるのだろう。大体、残り30年もある !!
この本は、必ずしもその後の人生を充実して過ごしているわけではない、多数の定年者とその予備軍へのエールである。
導入部は素晴らしいリアルさで、身につまされ共感する経験者は少なくないだろう。後半部にかけてリアルさは影を潜め、安っぽいドラマとなり白けるような展開ではあるが、まぁ普通の実生活をそのまま書いたって小説にはならないので仕方ないという事にしておこう。
今更こんなのをネタにするにはちょいと理由があり、知ってる人もいるだろうが、この小説が映画化され、6月から公開中なのだ。
やはりこの種の作品に対するニーズの絶対数が多いせいか、6月末現在も興行成績トップ10内にある。
意外というか、ちょっと驚いたのが「映画化」という事。中高年以降の年代には共感を得やすい内容だろうし、小説らしく後半部にはいくつか”事件”も盛り込んであるが、いかんせん小さな出来事ばかりだしで、テレビドラマにこそ適した素材と思っていたのだった。
主人公が「超」の付くようなエリートビジネスマンという設定には反発が少なくないだろうが、このくらい極端な設定の方が「終わった」後の心境や生活との落差が描きやすいし、その後のストーリーが書きやすいというのもあっただろう。この設定に不満を持つような層がイメージするだろう、並の会社に勤めていた並のサラリーマンだったとしたら、後半部の展開はやはり「いくらなんでもあり得ない」からね。
おそらく計算ずく。以前の経歴がどうだったのかなんて「終わった人」になると関係なくなるという作者の主張でもあるのだろうし。
完全にターゲットを絞って書かれたこの本を買うという人たちは、会社によって一方的に会社人生から”葬られ”てしまい、残りの人生の羅針盤を求めている層だろう。この本はその期待に応えているのか ? 読めば分かる。答えは「ノー」とだけしておく。( ´ー`)
ただしそんなのは当たり前、正解があるはずがないのだ。このご時世”定年”をテーマとした本がわんさと出ている事実が証明している。
後半部にいわゆる”ツッコミどころ”が少なからずあるが、それらはこの小説の価値を損ねるというほどではない。
その後半部には共感出来そうな場面がほとんど出て来ないし、読後に静かな感動を覚えるというほどのエンディングでもない。
ただ、長女に「恋でもしてみたら?」とけしかけられてから都合よくめぐりあった若い美女(主人公からしたらね)との淡いロマンスは、予測可能な展開とはいえ、いかにもありそうな独り相撲の悲しきエピソードで気の毒だが面白かった。悪気はなさそうだが結果的に悪女決定。( ´ー`)
映画では広末涼子がこの”悪女”を演ってるようなので、これはど真ん中ストライクで、この点だけでも見てみたい気はするな・・・
そして、ヒントになるような道筋のひとつを取り上げてエンディングとしているが、当然万人共通でもない。
しかも、一見キレイな終わり方にみえるが、結局は「逃げてるだけ」に過ぎないので、この物語そのもののお話はまだまだ続くはず。
「答えはない」とはいえ、”さりげないヒント”はたくさん散りばめられていて、読者への作者の主張なりアドバイスは二名の登場人物のセリフに集約されている。主人公の長女と義弟という、一見異なる人格のような二人だが、言っている事はほぼ同じ。辛辣だがエールでもある。
象徴的なのは、自堕落になりそうでもがき続ける主人公への義弟の一言。「義兄さんはソフトランディングしそこねたんだよ・・・」
いや、いいセリフです。長女もたぶん30代そこそこなのに、驚くほど達観していて切れ味鋭い正論を連発ってスゴすぎ。これは完全に作者の代弁者として言いたい放題にさせてる。読者にもグサッと来るようなのもあり、この二人の発言が核心でしょう。( ´ー`)
もっとも、この義弟さんの後半部のエピソードが、「あり得ん !!」とかなりテンションを下げさせてくれるのだが・・・
それにしても下手くそな読書感想文や。ここまで読み返してみてちょっと凹んでしまった。
残念ながら、とても読書経験を記事ネタに出来るレベルではない事が確認出来たので多分もうやりません。(*´・ω・)
最後に蛇足。
これを書いてる本人は、幸い「まだ終わってない」が、ソフトランディングに向けて助走の準備中・・・( ´ー`)
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