オーディオ愛好家を訪ねて

筋金入りのオーディオ愛好家が経営する奈良市の名曲喫茶

知る人ぞ知る名店「エル・ムンド/cafe El Mundo」さん

静かで美しいクラシック音楽が終日流れている、希少な純喫茶です。

実に創業40年!!くらい

ポタリングコースの中でずっと気になっていたのが、奈良市最大の商店街「東向(ひがしむき)商店街」の反対側に位置する「東向商店街」を少し入った場所にある喫茶店。カフェなのだが昔ながらの純喫茶と呼びたくなる古い造りの店である。
店は2階にあり、常時音楽が流れているはずだが通りから音はほぼ聞こえない。
窓から見えるヴィンテージらしき機器の背面を見てジャズ喫茶だろうなと思いこんでいた。

小さなビルの2階にあり、狭くて勾配のきつい階段を登らねばならず一見して入りにくそうな雰囲気を感じるが、入ってみるとすぐに分かる、気さくで優しいママさんが笑顔で出迎えてくれる。

デヴィ夫人を思わせる、高貴な印象のママさん。ご夫婦で店を開いて40年くらいになるらしい。
こじんまりした店内に入ると目に飛び込んでくるのが、本格的設えの食器棚と高級コーヒーカップ群。
メニューはコーヒー紅茶などの他はトーストとチーズケーキのみという、今では希少な「純喫茶」である。お値段は600から900円くらい。

店の奥、表通りに面した壁面には目を疑うようなすごいオーディオ機器があった。
思いつくままにいろいろ質問してみると、快く雑談に応じてくれる。

並のオーディオマニアもかなわない、すごい店主の知識

驚いたのが、オーディオ機器と音楽に関する知識の量と多大な経験値に造詣の深さ。
機器の説明をさらっとおっしゃるが、こだわりがスゴい。聞けば聞くほど、ただものじゃない印象。ママさんのことですよ。😅
機器の選定からメンテナンスまですべてママさんの手によるものだとのこと。
さすがに故障時は懇意の高級オーディオ専門ショップに依頼されていて訪問修理までしてくれるらしい。どれもこれもものすごく重い機器ばかりだからそうだよね・・・なのだけど並のビンボー庶民ではムリなハナシではある。😅
最近亡くなられたというご主人は画家であり古書店主として店の運営を棲み分けておられたらしい。
単なるヴィンテージ趣味ではなくすべての機器は実稼働している。

フツーのショップでは絶対お目にかかれない、シンプルで上質な仕上げのスピーカーは、それもそのはずでイタリアのオーディオメーカーで現地で30年前くらいに購入されたとのこと。生産数希少で特注品に近い製品である。メーカーの経営者も亡くなっているので二度と手に入らないらしい。
素人目でみてもものすごい本格派と感じるが、構成はごくシンプルである。そこですぐに気づいたのは同じ機能の機器が一組ずつしかないこと。レコードプレーヤーだけは2台あるが、これはモノラルレコードとステレオレコードで使い分けているとの説明だった。もちろん機器の更新も必要最低限で良いものを長く愛用。まさに達人です。恐れ入りました。😅
本記事のタイトルを「オーディオマニア」ではなく「愛好家」としたのはこれが理由。

マッキントッシュの真空管式パワーアンプ(MC2000?)も、同社のオーナーが手造りで製作した200台のうちの1台なのだとのこと。
メーターがやけに暗いと思ったら、ふだんは照明をオフにしているそうで「これじゃ画になりませんから」とお願いして点灯してもらった。
電球の寿命を気にされているのかと思ったら、ブルーのメーターには特に価値を感じていないからだそうで・・・😂

営業中はCDプレーヤー再生だが、好きな楽器があるか聞かれて「チェンバロ(ハープシコード)かな」とテキトーに答えたら特別にママさん厳選のモノラルレコードを聴かせてもらえた。
すみません、その良さが良く分かりませんでした。知ったかぶりするんじゃなかった・・・😅
ターンテーブルに乗せる前のレコードクリーニングは、専用の刷毛というかブラシでちゃちゃっと済ませている。
もちろん時々念入りに液体クリーナーでみっちり清掃もされているとのこと。

店内に並べてあるレコードは最小限。3階の自室には膨大な所蔵コレクションがあるらしい。
営業終了後の夜に2階に降りてきてひとりで楽しまれているとのこと。

食器についていくつか説明してもらったが、ほぼ覚えていない。ひとつ残らずこだわりの高級品であることだけは分かった。こんな人がオーナーなのでもちろん珈琲にも手抜かりがあるはずもない。
この日頼んだのはコロンビア、コクがあるスッキリ爽やかな期待通りの美味しさだった。
代金について。この日(10月22日)は550円だったが、翌月の訪店では620円に値上げされていた。諸般の事情だろう。
他のカフェも軒並み値上げしてるし、この店に来るような客層にはどのみち関係ないだろうけど。😊

マスクなしの素顔でとお願いして撮影させてもらった。ママさんじゃなくてマダムの方が合ってるな。
店の構造からして、どうもこの位置が最良のリスニングポジションかもしれない・・・😊
繁忙時はヴァイオリニストである娘さんが時々手伝ってくれているらしい。

達人の境地とは言っても・・・

「あなたはどんなオーデイオで聴いてるの?」と聞かれて「マッキントッシュやJBLといっても自分の機器は底辺なので・・・」というと「それで全然良いじゃない。オーデイオにお金なんてかける必要はないし値段も関係ない。自分で気に入った音で鳴っているのならそれでいいのよ。要は好きな音楽を素直に楽しむこと。」と優しくアドバイスしてくれる器の大きな人である。まぁ、”自分で気に入った”のレベルがまったく異なるのだが「ホントそうだよね」と共感するのがしあわせというものである。

後日談

「この人はなんでここまで詳しいのだろう」と気になって後日再訪してみた。
ラッキーなことに先に常連客が陣取っていて、話を聞かせてもらうと近所に住む塩田さんという大学教授の方で、ママさんよりはるかにすごい「桁外れの」オーデイオマニアだそうだ。
30年来の常連客だそうで、塩田さんに触発されて詳しくなり一気に機器のグレードアップをしたらしい。女性なので、紹介された高級オーディオショップにひとりで行っても当初は全く相手にされなかったそうだが、気にせず通っているうちに真摯に対応してくれるようになったとのこと。

達人に触発されて、お宝アンプをラックから引っ張り出して天板に置いてみたらがぜん満足度が上がった。😀
スモークガラス扉の奥に常置なんて宝の持ち腐れそのものだったな。
音質も機能面も不具合がないのだから、やはり処分することは考えられない。
唯一の問題が右側出力メーター照明の輝度低下なのだが、切れたらDIYに挑戦してみることを決意した。

やっぱりこれですよ、これ。😊

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA